2011年3月27日日曜日

永口靖さんの「音の仕事」

音の魅力、または音の仕事のどこが魅力か?
何も無い所から、みんなが集まりお互いの力を出し合って、一つの映画が作られます。その多数のスタッフの中で、映画の音を一手に引き受けてるのでやりがいがあり夢中です。

この仕事の難しさ
撮影時、芝居や画にとって良い事が、必ずしも音にとって良い事とは限らない時があります。そんな事は当たり前ですがやはり頭痛の種です。景色の良いロケ地でも、録音的には良くなかったり、物語の雰囲気と異なっていたりもします。こんな行き違いを仕上げで修正するのも非常に困難ですが、上がりさえ良ければ十分です。

この仕事をするきっかけ
僕の実家は、近くに映画館が無く、小さな頃は十分に観れませんでした。幼馴染みが、中学生位から映画にはまり、それに付いて行き、遠方の映画館へ足を運ぶ内に興味を持ちました。
そして専門学校に進学しましたが、「映画を作ってみたい」というシンプルな欲求からでした。入学した専門学校で、録音を教えておられたのが、元、録音協会の副理事をされていた、桜井善一郎先生。桜井先生とは、同郷という事もあり、大変にかわいがって貰いました。
就職活動を始まる頃に、桜井先生から、「僕の弟子が某スタジオにいるから、就職してみないか?」と言われ、連れて行かれたのがCSWの前進「福島音響」でした。

profile  永口靖(えぐち やすし)Cinema Sound Works 所属
京都府出身 1968年2月19日生まれ
担当作"デコトラの鷲"シリーズ DVREFLECTION 呪縛の絆あしたはきっと・・・狂弾2 アジア暴力地帯歯科医安藤組外伝 掟NINE 9発熱天使

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鳥羽瀬縁さんの音の仕事

音の魅力または音の仕事のどこが魅力か?

今、映像に音がついていることが普通になっていますが、音のない映像に音楽やセリフ、効果音がつくことによってドキドキしたりホッとしたり、悲しくなったり…。監督やディレクターが見ている人に伝えたいことをよりリアルに感じられるところ。

この仕事の難しさ正解がないところ。Mixしたものを判断してくれる人はいますが、自分の中に引き出しがいっぱいないと薄っぺらいMixになってしまったり、お客さんの要望に答えられなかったりするので。 これからも映画や舞台、TVなどを見て勉強していきたいです。

この仕事をするきっかけ専門学校では、主に電気修理の勉強をしていました。もともとPAの仕事がしたかったのですが、別の会社で就職の面接の時に「大きなホールなどでの仕事は女の人はとらない」と言われてしまいあきらめました。就職で悩んでいたときにアオイスタジオの求人を見つけ応募してみました。そのときには細かい仕事内容は分かっていなかったのですが、自分のやりたい仕事に近かったので入りました。


アオイスタジオ 鳥羽瀬 縁 

中野明さんの「音の仕事」  2006.07.10

はじめまして、アオイスタジオの中野 明と申します。
主に、音の品質管理に携わる仕事をしております。また、新入社員教育にもながらく関わっておりました。

音の魅力、または音の仕事のどこが魅力か?
『音とは、分子レヴェルの物理現象である』。そこには、音響工学、聴覚心理、建築音響、騒音と振動、楽器音響、電気(電子)音響、音響分析など、様々な世界が広がっております。さらに、科学では割り切れない感性を主とする地球上の様々なものを揺り動かす無限の芸術的な世界が広がっているところに大いなる魅力があります。 

また、視覚は目を閉じると、とりあえず瞼で外界から遮断されますが、音(振動をも含む)は四六時中、体感できます。この遮断しにくいところにも魅力が潜んでいるようにも感じます。 物が動く時、必ずと言ってよいほど音が発生します。また、その音はその場限りの唯一無二の音です。その分子レヴェルの現象を観察把握し、どのように他の人や物に伝えていくかの過程において、経験と自由な発想を駆使し、自分の想いを込める事ができるのが「音の仕事」の魅力的な部分と思っております。

この仕事の難しさ 
仕事ですので、自分の趣味と違って他者とのかかわり、予算や時間の制限があります。その制限の中で、自分の主張をどこまで表現できるかが、難しいところだと思います。 どんな仕事でも同様だとは思いますが、人それぞれ物の見方考え方に違いがありますので、コミュニケーションをとってよい良い方向へ収束させる事が必要です。

この仕事をするきっかけ
一言でいってしまえば、「音に興味があった」。 無意識の時から、常に周囲に存在している音。それを自分で知覚したのは、母親の胎内での音、産まれ出、初めて空気の振動を全身で感じた時の原体験か、定かではありません。 
 意識して探求の迷宮へと入り込んだのは、幼少の頃、電話と実際の人の声を聴いたときか、同一の曲で、父の聴いていた同じレコード盤からの音楽とラジオから流れ出る音楽の、音の差を感じた時のような、記憶があります。 

その後、日本盤との海外盤の音の違いや、使用する装置による音の差に興味を引かれ、ベートーベンと同じように
"Nicht diese Tone!"
と言い続け、自分の理想とする音を求めて研究し続けて気がついていたら、この仕事に就いていました。

今後とも、Mr.Bob Katz(Degital Domain社Engineer)の警句。
"There are two kinds of fools,
One says-this is old and therefore good.
The other says-this is new and therefore better."
を、肝に銘じ、「愛される音」そして「未来に対して責任のある音」を後世に継ぎ遺すことに努力を続けてまいります。

これから『音の仕事』を目指すかたに
1.『音』ではなく他の事や趣味で、深く探求した事柄を持っていると役に立つ事が有るかもしれません。
2.眠る前に「今日一番印象に残った音」を振り返って考えてみることをお勧めいたします。
3.『音』への取り組みは、各社、各人個性があり、技術や機材も日々変化し同じという事はありません。そこで役に立つのは、小手先のテクニックではなく、普遍性のある基礎です。語学を含めた基礎理論学習を独学でも、キッチリとマスターしておくことが大切だと思います。

そして最後に皆様に質問。
「ある室内空間でロウソクの燃える音」を、他の人にイメージさせる ためには、どのような音表現をつくりますか?

自分の想いを述べる場所を与えていただいたスタッフの皆様、ならびに、長文をここまで読んで下さった皆様に感謝し、ベートーベン「第9交響曲合唱付き」の第四楽章の冒頭の詩にあるような、より良い「音環境」を願いつつ、この文章を 終わります。


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室園剛さんの「音の仕事」

音の魅力、または音の仕事のどこが魅力か?
音の仕事って幅広いけれど、僕の場合は音に関することなら何でもやりますね。現場に行ってマイクを振れば、ミキシングもして、簡単なものだったらシンセサイザーで音楽を創ったり、効果音をつけたり。でも大部分はポストプロダクション業務が中心です(写真参照)。

ポスプロでは出来上がった映像に命を吹き込む重要な役割を担います。画に対して台詞、音楽、効果音の順番に音をつけていきます。台詞やフォーリー(画に伴う動きの音,足音など)は映像にストーリーや輪郭をつけることができます。環境ノイズはシーンの空間の臨場感を表現します。サウンドエフェクトや音楽は作品を演出します。音が重ねられるにつれて作品が様変わりする、どんな作品でも僕はモノを作り上げた達成感に酔い浸れることができますね。


この仕事の難しさ
音の仕事をするのにとくに難しいことは感じませんね。ただこの世界で特に大事なことは健康管理とコミュニケーションに長けていること。不眠不休、収録や編集することも多々、とにかく不規則、不摂生になりがち。体が資本ですから睡眠時間や食生活などの健康管理に気を遣っています。若い頃は無理をしても体力がありますからカバーできます。でも着実に体は蝕まれています。

それからコミュニケーションが大切ということはどんな仕事でもそうですが、特に映画は総合芸術技術。音を収録や編集するにしても一人では絶対完遂できません。常に監督をはじめとするスタッフと協調しなければなりません。たとえば殺伐とした現場でどうしてもマイクをあとワンマイク(約40cm)役者に近づけなければ台詞が収録できない!というときa`~~ノ

ブームオペレータ:「○○さん(撮影カメラマン)マイクここまで下ろしたいんですけど」

コミュニケーションをとれていない場合には、

撮影カメラマン:「バカヤローふざけるな」

でもこれがコミュニケーション一つで

撮影カメラマン「お前もがんばっているから、まぁしゃーないか」

画のサイズを少しアップにしてくれたり構図を下方修正してくれたりして、一寸極端な例ですけどこんな感じで窮地を脱する場合もあるんですよ。撮影も照明も美術も衣装もメイクも画を創っていて、音を扱っているのは録音パートだけなので気は遣いますね。

この仕事をするきっかけ
実は大学まで全然違うことやっていて、専攻は機械工学なんですよ。飛行機の翼や船体の研究(流体工学)をしていたんです、今の仕事と全然違うでしょ。(笑) 昔からモノを作ることが好きで、もちろん機械工学も好きだったんですけど、なんか専門的なことを突き詰めていくとやっていることが細かくなって全体が見えてこないんですよ。言い換えれば船全体の設計をしたいのに実際は船の底板を取り付けるねじの設計だけをやっているようなことです、実に細かい。

そこで就職するなら絶対達成感を得られる仕事をしようって決めたんです。決して機械系の仕事は達成感がないっていっているわけじゃないですよ。それで動機は不純ですけどテレビや映画の仕事って終わった後にみんなで乾パーイってやるじゃないですか、あれに憧れたんですね。みんなで一つのものに向かって完成させる、その道中は討論や喧嘩で喧喧囂囂とすることも少なくない、でもスタッフそれぞれいい作品に仕上げようとしているわけですからやっぱり終わった後のカンパーイは最高ですよ。

話しを戻すとなぜ音の仕事をやろうと思ったのか?それは音楽をやっていたということもあるんですけど、映画の録音部って作品を作る全過程(クランクイからゼロ号試写まで)に携われるんですよ。映画の代表的なパートに撮影や照明や美術、編集などがありますが首尾一貫したモノ作りを体感できるパートって監督か録音なんですよ。なぜ監督を目指さなかったのかって?僕はそんな器の持ち主じゃないですから・・


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嶋岡智子さんの「音の仕事」

音の魅力、または音の仕事のどこが魅力か?

例えば好きな音

ちょっと季節はずれですが新雪を踏む音

傘にあたる雨の音(大雨はいまいちですが・・)

折りたたみ式の携帯電話を閉じる音

パソコンが起動する時の音(最近はかなり静かですけどね)

プリンターの音も好き線香花火のピークの時の音

例えば電話で当然相手の表情は見えないんだけど・・・

相槌をうってるけど人の話を聞いてないな、と感じたり機嫌いいな・悪いな・・・と感じたり

ちょっとした間が心地よかったり悪かったり


例えば今ちょっと語学番組で勉強してるんですが、

テレビでなくラジオの語学講座を聴いてます。

その方が集中できるから。

音にはいろんな表情があり性格があり、その時々でいろんな意味があり力があり・・・

そんなところが魅力でしょうか。

この仕事の難しさ
私はNHKのドラマ番組技術というところで音の仕事をしています。いろいろな番組を担当しますが、文字通り主にドラマの制作に関わっています。マイクロフォンを操って俳優さんの芝居(セリフやアクション、それを取り囲む様々な音)を録音するところから、最終的に、音響効果さん(NHKでは音響デザインと呼び、シーンごとに効果音をつけたり音楽をつけたりします)と共にセリフ・様々な効果音・音楽という音の要素をMIXする作業までやります。

難しいと感じる部分は裏を返せば面白い部分でもあります。テレビだと映像があるわけですが、その中で音をどう表現していくかというのはいつも頭を悩ませます。映像に写っているものの音を確実に表現したり、映像に写ってない部分のいろいろなことを表現したり、映像に写っていても音として表現しない方が効果的だったり、その作品のそれぞれのシーンの持つ性質によって表現は違ってきます。はじめに書いた「音の持つ表情・性格・意味・力・・・などなど」をどのように映像と絡めていくか、というのが最大の楽しみでもっとも難しいことです。

本当は撮影に入る前に演出や音響効果さんと作品の音の構成について十分に話し合いが出来ればいいのですが、テレビの撮影だとなかなか「時間」がありません。撮影現場はつねに時間との戦いで、変更もしばしばです。あ、だからこの仕事をやろうと思ったら、反射神経と体力は必要かも・・。それに映像と違って音は目に見えないので、こちらのこだわりがまわりに理解されにくいこともよくあります。よい音を録るには音声としての技術的なテクニックだけでなく、周りの理解を得るためのコミュニケーション力がやっぱり必要です。このことは他の方も言ってましたけど。

この仕事をするきっかけ
特別に「音声」の仕事をするための勉強をしていたわけではないです。特にNHKは「技術」ということで採用し、入局後にさまざまなセクションに配属されるのですが、その中で私は「制作技術(番組の制作に関わる技術)の音声」という希望を出しそれがかなったわけです。なぜ、そういう希望を出したかというと単純に「音に興味があった」というだけです。

もちろん専門の知識があるに越したことはありません。「音」の仕事は機材も多いしシステムも複雑です。最近では音声卓は巨大なパソコンと化し、ネットワークの知識も必要になってきています。工学系の学校を卒業していながら、実はパソコンなどとっても苦手な私にはつらい時代が来ちゃったなーという感じです。でも自分が興味を持った音を表現するためには、そういったツールを使いこなさなくてはなりません。

これから音の仕事をしたい!と思っている方はもちろんそういう専門的な勉強をしたほうがいいと思います。頑張って下さい。だからといって専門の勉強をしたことが無くても心配になることはありません!「音」に興味さえあれば頑張れると思いますよ。


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野村みきさんの「音の仕事」

はじめまして、東宝サウンドスタジオの野村みきと申します。女性の視点でこの仕事の魅力を・・・と、少し考えてみました。撮影現場と違い、私は常にスタジオにいますし、毎度力仕事がある訳ではありません。電気系統やコンピューター関係など、男性が強い部分もあるとは思いますが、その点をクリアしていれば、女性でも全くハンデなく働ける現場だと思います。

この仕事の魅力
今更言うまでもない事ですが、私達は常に音と共に生活しています。少し意識して周りの音を聴いて下さい、パソコンの音が一番大きく聞こえると思います。遠くの人声や、車の音など、ありとあらゆる音が耳に入って来ますが、その音が全て同じ大きさ、同じ響きで聞こえる事は絶対にありません。音と言うものは大変面白いものです。はまらなければわかりづらいと思いますが、この仕事の魅力は、映画という媒体で、「音」をどれだけ表現できるか?ではないでしょうか・・・。

この仕事の難しさ
ポストプロダクション作業は非常に幅広いもので、大変難解な所があります。 現在、ポストプロの流れはシネ主体のDBの時代から大きく変化し、デジタルの波が押し寄せて来ています。新しい技術が次から次へと導入され、その波に決して乗り遅れてはいけません。逆に先へ先へと進んでいかなければいけないのです。

私達ポストプロの人間は、新しい機材を正しく理解し、録音部さん効果部さんに使いやすいよう提供する、という事もしなければなりません。

私は元々はコンピューターなどに詳しくないので、ついていくのが大変な時もありま何故この仕事を選んだか縁あって東宝サウンドスタジオに入社させていただきましたが、学生時代はただの映画好きで、制作に関心を持った事はありませんでしたので、映画や音響の専門学校には行っていません。私の場合は本当に縁あってなのです・・・。

女性(男性も含む)の方で、ポストプロダクションを目指そうと思っている方!ある程度電気に強い事が必要条件です。スタジオの機材は全て電気機器で成り立っています。それらのどれかがトラブルを起こした時、電気に強くなければ対応できません。女性で電気に強い人は少数だと思いますが、この職業を目指すなら今から電気の勉強をした方がいいと思います。(ちなみに私は全くダメです)

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秋本彰さんの「音の仕事」

皆さんが、映画館で映画を見る時に、もし「音が」無かったら、それは「映画」と は云えないでしょう。

それ程、映画にとって「絵」と「音」は、重要な要素となって います。 映画やテレビの録音は、セリフや自然音だけではありません。音楽や音響効果音も入ります。

近年「絵」の方では,CGデジタルの合成技術が発達し、今では未来の乗り 物や過去の恐竜など、人間の発想するあらゆるものが表現出来る様になりました。それに伴って「音」も今まで聞いたことが無い様なものを、色々な音を合成しなが ら創り上げていかなければなりません。だから最近では、音響効果を扱う人は専門の チームを作って仕事をしています。

さて、「録音技師」とはセリフ、音楽、効果音などあらあゆる「音」を映画の性質 や場面の雰囲気などあらゆる「音」を、映画の性質や場面の雰囲気等を考えて、監督 とも相談しながら、使う音をアレンジして決めて行く。いわば「音の演出家」なのです。

ですから一人前になるには一定の経験と本人の努力と才能が重要なのは云うまでもありません。映画でもテレビでも、「絵」にある音をつければよいという程、単純ではありません。作品の流れの中で、「音」が無い方が、むしろ効果的である場合もあります。

例えば、「ロード・トウ・パディション」(トム・ハンクス主演)という、アメリカのギ ャング映画のクライマックスで、主人公がマシンガンを撃ちまくるシーンがありますが、この場面だけマシンガンの音を入れていません。雨の音と音楽だけで、闇の中で 尖光だけのシーンは、観客に強烈な印象を与えました。

この様に「音」の演出は、多種多様で無限の組み合わせがあります。

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