2011年3月27日日曜日

室園剛さんの「音の仕事」

音の魅力、または音の仕事のどこが魅力か?
音の仕事って幅広いけれど、僕の場合は音に関することなら何でもやりますね。現場に行ってマイクを振れば、ミキシングもして、簡単なものだったらシンセサイザーで音楽を創ったり、効果音をつけたり。でも大部分はポストプロダクション業務が中心です(写真参照)。

ポスプロでは出来上がった映像に命を吹き込む重要な役割を担います。画に対して台詞、音楽、効果音の順番に音をつけていきます。台詞やフォーリー(画に伴う動きの音,足音など)は映像にストーリーや輪郭をつけることができます。環境ノイズはシーンの空間の臨場感を表現します。サウンドエフェクトや音楽は作品を演出します。音が重ねられるにつれて作品が様変わりする、どんな作品でも僕はモノを作り上げた達成感に酔い浸れることができますね。


この仕事の難しさ
音の仕事をするのにとくに難しいことは感じませんね。ただこの世界で特に大事なことは健康管理とコミュニケーションに長けていること。不眠不休、収録や編集することも多々、とにかく不規則、不摂生になりがち。体が資本ですから睡眠時間や食生活などの健康管理に気を遣っています。若い頃は無理をしても体力がありますからカバーできます。でも着実に体は蝕まれています。

それからコミュニケーションが大切ということはどんな仕事でもそうですが、特に映画は総合芸術技術。音を収録や編集するにしても一人では絶対完遂できません。常に監督をはじめとするスタッフと協調しなければなりません。たとえば殺伐とした現場でどうしてもマイクをあとワンマイク(約40cm)役者に近づけなければ台詞が収録できない!というときa`~~ノ

ブームオペレータ:「○○さん(撮影カメラマン)マイクここまで下ろしたいんですけど」

コミュニケーションをとれていない場合には、

撮影カメラマン:「バカヤローふざけるな」

でもこれがコミュニケーション一つで

撮影カメラマン「お前もがんばっているから、まぁしゃーないか」

画のサイズを少しアップにしてくれたり構図を下方修正してくれたりして、一寸極端な例ですけどこんな感じで窮地を脱する場合もあるんですよ。撮影も照明も美術も衣装もメイクも画を創っていて、音を扱っているのは録音パートだけなので気は遣いますね。

この仕事をするきっかけ
実は大学まで全然違うことやっていて、専攻は機械工学なんですよ。飛行機の翼や船体の研究(流体工学)をしていたんです、今の仕事と全然違うでしょ。(笑) 昔からモノを作ることが好きで、もちろん機械工学も好きだったんですけど、なんか専門的なことを突き詰めていくとやっていることが細かくなって全体が見えてこないんですよ。言い換えれば船全体の設計をしたいのに実際は船の底板を取り付けるねじの設計だけをやっているようなことです、実に細かい。

そこで就職するなら絶対達成感を得られる仕事をしようって決めたんです。決して機械系の仕事は達成感がないっていっているわけじゃないですよ。それで動機は不純ですけどテレビや映画の仕事って終わった後にみんなで乾パーイってやるじゃないですか、あれに憧れたんですね。みんなで一つのものに向かって完成させる、その道中は討論や喧嘩で喧喧囂囂とすることも少なくない、でもスタッフそれぞれいい作品に仕上げようとしているわけですからやっぱり終わった後のカンパーイは最高ですよ。

話しを戻すとなぜ音の仕事をやろうと思ったのか?それは音楽をやっていたということもあるんですけど、映画の録音部って作品を作る全過程(クランクイからゼロ号試写まで)に携われるんですよ。映画の代表的なパートに撮影や照明や美術、編集などがありますが首尾一貫したモノ作りを体感できるパートって監督か録音なんですよ。なぜ監督を目指さなかったのかって?僕はそんな器の持ち主じゃないですから・・


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